大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)97号 判決

なお論旨を斟酌し、職権に基いて、原審事実認定並に法令適用の当否を案ずるに、原判決を検討すれば、原審は事実理由(オ)第一(一)に於て、被告人保井政三が本多藤吾から一人前金百八十五円相当の饗応を受けた事実、(オ)第一(二)に於て、同被告人が本多藤吾から清酒一升の供与を受けた事実、(ワ)第一に於て、被告人瀬川健太郎が保井政三から一人前金百八十円相当の酒食の饗応を受けた事実、(カ)第一に於て、被告人本多勇作、同西村菊次郎、同浦野喜久知、同浦野義治が本多藤吾から一人前金百八十円相当の饗応を受けた事実を、それぞれ認定すると同時に、これ等受饗応、受供与の所為を以て、他の一面に於て、公職選挙法第百二十九条に定める選挙運動期間前の選挙運動に該当するとし、事実理由中にその旨判示した上、同法第二百二十一条第一項第四号の外、同法第二百三十九条第一号をもこれに併せ適用し、処断していることを認め得る。しかしながら、凡そ或行為を「選挙運動」と指称し得るためには、特定の選挙に際し、特定の候補者又は候補者たらんとする者の当選を図ることを、当該行為に不可欠の要件とし、受供与又は受饗応の如き、単にその情を知るに止まり、前記のような特別の目的を、必ずしも希求しない行為は、それのみでは、選挙運動なる概念中に、直ちに包摂されないと解すべきであるのみならず、荀も「運動」と言うからには、程度の差こそあれ、兎も角も他人に対し、或目的を達成するため、計画的に交渉する行為であることを要し、受供与、受饗応のように、単に他人の行為より生じた利益を、自ら享受するに過ぎない行為を、その内に含まないと解すべきであつて、この見地よりすれば、原判決は選挙運動なる概念に該当しない行為を、選挙運動であると誤認し、延いてこれ等の行為に対し、適用すべからざる法令を適用するに至つたものと言わざるを得ず、その誤りは判決に影響するから、原判決は此の点に於ても破棄を免れない。

(裁判長判事 高城運七 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)

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